退去立ち合い
賃貸借契約が終了する際、部屋から賃借人の私物を全て運び出した状況で、管理会社やオーナーと賃借人が一緒に部屋の確認を行うことです。通常、賃借人の最終退去日より前に日程を調整して行います。これは、賃借人の退去後に部屋の修繕、いわゆる「原状回復」を行う前に、どんな傷がどこにあり、賃借人が付けた傷であるのか、それ以外なのか、原状回復する必要があるのか等を確認する機会になります。
夜逃げ
賃借人が正規の手続きを経ず夜中にこっそり逃げるように引越しをしてしまうこと、住民票の異動手続きを行わず、その住所からいなくなることを「夜逃げ」と呼びます。夜逃げは、借金等の取立てから逃げるために行われる場合も多いですが、それ以外でもDVやストーカー、離婚トラブル等が原因で夜逃げせざるを得ないという状況の場合もあります。賃貸住居からの夜逃げについては、「家賃が未納」「連絡が取れない」等の事態が発生し発覚することがほとんどで、明渡請求訴訟や保証会社とのやり取りが煩雑になり、賃貸人にとっては非常に手間と労力がかかります。また、賃借人が連帯保証人を立てて契約していた場合は、連帯保証人が債務を引受けることとなり、多大な迷惑をかけてしまいます。
【理由・注意点】既存不適格建物のリスクについて
汚れや傷の確認と対応
- 入居者の故意・過失で生じた傷や故障などの補修請求箇所確定
- 入居前から存在した傷や汚れの確認
- その他備品や設備について破損や修繕の状況を確認し、不具合が無いように修繕を依頼
入居の際(賃借人が部屋を使用する前)に、部屋がどんな状況なのかを賃借人と管理会社が写真で記録し、お互いの認識が相違しないようにしておくことが重要です。客観的に使用前と使用後の状況を確認できるよう記録しましょう。また、入居後に設備の不具合が生じた場合、例えば、ゴムパッキンの劣化による水漏れが発生した場合などは、その程度によって多額の水道料金が請求される、漏水が浸透し床が腐る、下階まで漏水の影響が出てしまうなど、大きな問題となる可能性もあります。入居中に異常を確認した場合には、管理会社へ連絡し状況の報告や共有を行うことにより、敷金トラブルや過大請求等のトラブルを避けることを心掛けましょう。
自力救済の禁止
自力救済とは、自分の権利が侵害されている場合(家賃滞納や夜逃げ)に法の助けに依らず、自力で侵害状態を解消することです(滞納している部屋を貸せる状態にする)。「私力の行使は、原則として法の禁止するところであるが、法律に定める手続によったのでは、権利に対する違法な侵害に対抗して現状を維持することが不可能又は著しく困難であると認められる緊急やむを得ない特別の事情が存する場合においてのみ、その必要の限度を超えない範囲内で、例外的に許される」(最判昭和40年12月7日)上記判例があり例外的にその行使が認められていますが、賃貸人が賃借人の家賃滞納等で権利侵害を受けていたとしても、賃貸人が自らの一方的判断で私力を行使しようとすれば、各種法規に抵触してしまうことになりかねません。
- 室内に勝手に侵入→プライバシー権侵害、住居侵入罪、窃盗罪の可能性
- 鍵の勝手な交換→住居侵入罪、不動産侵奪罪
現に賃借人が賃料を滞納し債務が履行されず、賃貸人として権利を侵害されているからと言って、上記のような行為が認められてしまえば「やったもの勝ち」のような状態に陥り、秩序のある世の中が崩れてしまうため、そのような行為は禁止されています。
建物明渡請求訴訟、強制執行
長期間の賃料滞納や部屋に賃貸人が不在で一切連絡が取れないという状況でも、勝手に部屋の鍵を交換すること、残置された荷物を処分することは禁止されています。そのため、このような場合において賃貸人が行えることは、「建物明渡訴訟」を提起し法律に沿って対応することです。訴訟により明渡しの判決を得たうえで強制執行し、権利を回復するといった流れが必要になります。
明け渡し訴訟の流れ
- ①家賃支払い通知を送付(督促)
- ④契約の仮解除(暫定的に契約が終了)
- ②連帯保証人へ連絡(債務の履行を依頼)
- ⑤明渡訴訟(裁判)
- ③内容証明や督促、配達証明(記録が残る形で発送)
- ⑥強制執行(執行官による強制的な手続き)
確かに、時間もお金も必要となりますが、正規の手続きを経ることにより不要なトラブルを避け、新たな賃借人へ部屋を貸すことが出来るようになります。
【問題点】
- 賃借人から退去日の申請を頂いて、退去立ち合いの予定になっていたが、当日現地に現れず、連絡も取れなくなってし まった。未退去扱いになってしまい賃料請求、原状回復や鍵交換費用等の高額な請求をしなければいけなくなった。
- 退去立ち合いの際に、立ち合いを拒否して鍵を郵送にて返送希望したが、非常に高額な原状回復費用を請求された。
- 家賃の入金が無く、電話にも出ない入居者がおり、警察の立ち合いの元、室内に入ったが、もぬけの殻であった。今後の 残置物処分や対応についてとても困っている。
- 賃料の滞納が3ヶ月を超え、内容証明や電話連絡、直接話をして早急に支払いを促しているが、連帯保証人や入居者も 完全に拒否している。強制的に荷物を出して退去してもらうことは可能か。